心理占星術と未完成な日々┃nicosmic life

自分自身が納得できる人生を歩むために、ホロスコープの構造を利用する

精神分析の本を読み、コンサルテーションに活かす 入門編

ハーバード大学で心理学を学んだというノエル・ティルのメソッドには、隅々まで心理学のロジックが行き渡っている。

「欲求理論」やら「防衛」やら「理想主義」やらの心理学的解釈を占星術分析に組み込み、見事に構造化しているのだ。

無駄のない、有用的なメソッド。

けれど残念ながら、多少でも心理学の基礎がないと、または心理学的マインドがないと、ティルのメソッドを理解することが難しく感じられるらしい。

この完成されたメソッドを少しでもみなさんに理解しやすいようにと教えてはいるけれど、それを現場で活かすことができるようになるには、やはり心理学や精神分析の学習も併用してやっていくことが望ましいと考える。

そこで今日は、精神分析の本から入門編の活かし方をご紹介。

その本は、欧米に禅思想を広く知らしめた鈴木大拙と、ドイツの心理学者エーリッヒ・フロムの共著「禅と精神分析」だ。

鈴木大拙のレポートからは、日本人であることの誇りを呼び起されるとともに、日本人らしさというものを再認識することができる。これもコンサルテーションには重要な観点。

クライアントの心にしっかり寄り添うには、日本人特有の精神を深く理解することが必要だからだ。

そしてフロムのレポートは、コンサルテーションに使える知識が満載であり、また東洋の思想に合った精神分析のアプローチが提案されている。

たとえば、フロムはこう書く。

20世紀のはじめ、精神科の医師を訪れる人は、手が麻痺する、強迫症状に苦しむなど疾患で悩む人が大多数だった。彼らにとって精神分析は、症状を取り除き、社会復帰することを目指すための治療だった。ところが最近は、事情が変わってきた。多くの新しい患者が彼らにとって代わったのだ。

「これらの新しい患者は、自分たちが何に悩んでいるのかを知ることなしに、精神分析家のところにくる。彼らは、気が沈むとか不眠であるとか結婚生活がうまくいかないとか、仕事がおもしろくないとか、種々そのような悩みを訴える。彼らにある特殊の症候が彼らの問題であり、しかもこの特殊な悩みを取り除くことができるならば、彼らはよくなると信じている。しかしながら、これらの患者は、彼らの問題が抑うつとか不眠とか結婚生活とか仕事とかの問題ではないということが通常わからない。(中省略)この共通した悩みというものは、自分自身からの疎外であり、自分の仲間からの疎外であり、自然からの疎外である。生が人の手から砂のようにこぼれてしまう、また本当に生きることなしに人は死んでしまう、人はありあまるものの最中で生活するけれども、しかも本当の喜びがないというような意識である」

フロムの言う「新しい患者」の悩みは、現場を体験している占術家にはおなじみの悩み。

そしてこの辺の話は、ノエル・ティルの重要なメソッドのひとつ「太陽と月の循環」にしっくりくる。

太陽は自我意識の目覚め、自分らしさを社会に打ち出すエネルギーであり、月は自己の真の欲求(ティル的に言うと統括的欲求ですね)を司っている。

太陽と月という重要なふたつの天体の循環がうまくいかないと、個人は人生に不全感を感じやすくなる。

フロムの書いた「自分自身からの疎外、自分の仲間からの疎外、自然からの疎外、そして生が人の手から砂のようにこぼれてしまう」ことになるのだ。

このように、精神分析という小難しそうな本の中にも、占星術のコンサルテーションの場に当てはまる考え方を見つけることができ、そしてそれをティルのロジックの中にも発見することができる。

ちょっとした読書の中に、ティルの分析が美しく活かされているというお話でした。

この本は読み物としても十分面白いので、「難しそう」とビビらず、気軽に手に取ってみてほしい。

今ならアマゾンで中古品291円で買えるみたい。

安いね。