心理占星術と未完成な日々┃nicosmic life

自分自身が納得できる人生を歩むために、ホロスコープの構造を利用する

二十四時間の情事 Hiroshima mon amour

アラブの春は、2010年12月17日チュニジア中部で起きたある抗議自殺が発端だった。

失業中だった26歳の男性が果物や野菜を街頭で販売し始めたところ、販売の許可がないとして警察が商品を没収。これに抗議するかたちで青年は焼身自殺を図った。

この事件がきっかけとなり、高い失業率、腐敗政治、言論の抑圧などに対する不満が若者に広がり、全国でストライキやデモを起こすことになる。

次第にデモが全年齢層に拡大し、デモ隊と政府当局による衝突で死亡者が出る事態となり、その後チュニジアの政権は崩壊した。

311以降、日本でも東電やフジテレビに対する抗議デモなどが盛んに行われている。

私も一度だけ参加してみたが、何の感想も書くことができない。

私自身に何かが決定的に足りない。

私はフクシマの苦しみを本当に知っているのか?

フランスの作家マルグリット・デュラスが脚本を手掛けた映画「二十四時間の情事」は、反戦映画の撮影のため広島を訪れたフランス人女優と家族を空爆で失った日本人男性との恋が中心に物語が展開していくが、オープニングからラストまで、ふたりの同じセリフが永遠と繰り返されていた。

「私はヒロシマを知っている」

「あなたはヒロシマを知らない」

「外からやってきた人間が、どこまで原爆を知ることができるのか?」というのが、監督アラン・レネの狙いというが、おそらくデュラスは、さらにもっと個人的な記憶の深みまで描こうとしていたと思う。

人は体験していない記憶に対し、本当に「知っている」と言いきれるのか?

おそらく、答えはNOだ。

その乗り越えられない断絶を知ることこそ、理解の始まりではないか。

それを教えてくれたのがこの映画だ。

私はフクシマを知らない。

第一原発の爆発映像をTVで観た。

避難している人々の生活をTVで観た。

餓死した家畜たちも、がらんどうの家並みも観た。

放射能汚染の恐ろしさを記事で読んだし、「チェルノブイリの25年後」という恐怖のドキュメンタリーを観て、フクシマのその後を想像もしてみた。

でも私はフクシマを知らない。

それでは、私は今のフクシマのために何ができるのだろう。

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エマニュエル・リヴァ

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デュラスによるテキスト本は、セリフが美しくて好き。

アラン・レネは「夜と霧」が有名だけど、「去年マリエンバートで」の幻想的な映像は必見。

これも記憶がテーマになっているんだけど、黒沢明の「羅生門」に触発されて書かれたシナリオらしい。

是非、記憶の森を散策してみて。