心理占星術と未完成な日々┃nicosmic life

自分自身が納得できる人生を歩むために、ホロスコープの構造を利用する

占星術のジェンダー①

私は、あまりジェンダー問題やフェミニズム論について詳しく勉強したことはないのだけれど、心理占星術的に性差を考えないわけにはいかないだろう。

占星術には、男性サイン、女性サインとの動きや性質を二極にカテゴライズする12サインの解釈法がある。

これは生物学的なものではなく、宇宙のエネルギーの循環を解釈するための分類法のひとつと考えてもいい。

初めに男性・プラス・陽のエネルギーがあり、そのあとに女性・マイナス・陰のエネルギーが続く。

この絶え間ない宇宙の呼吸のプロセスこそ、エネルギーの循環だということになる。

また太陽、火星は男性的、月、金星は女性的というように、天体にも男女の区別がある。

リズ・グリーンがユング心理的解釈を用いて説明している、あの「すべての男性には女性が内在し、すべての女性には男性が内在する」というアニマ、アニムスの理論がこれに当たる。

ここから多くの占星術家は、女性は太陽を男性に投影し、男性は月を女性に投影するという解釈をしている。

でも、まあこの解釈は正確ではない。

自己の異性の理想像を相手に無意識のうちに投影し、自分自身で投影した異性像にだまされるという図式を作る。

女性がいくら旦那に太陽エネルギーを投影したとしても、それはつかの間の満足にしかならない。

つまり、自分の天体エネルギーを誰かに投影するということは、まやかしの関係に耐えるという試練を自ら招くということになる。

このように、ホロスコープを解釈する際、本人の性別によって、天体やサインの解釈を変えるというのは、一般的によくある話なのだが、これだけではジェンダーの問題は解決されない。

ジェンダーの問題というのは、社会的、文化的背景を無視しては語れないものだからだ。

その国のその時代の社会構造、価値観、法的なことまで含めて考えて判断しなければ、もしかしたら正しい鑑定はできないのかもしれない。

その辺で、私はよく悩む。

私の生徒さんにジェンダーの問題を大学で研究したという人がいるが、そういう方に心理学的にではなく、社会学的に分析を深めてもらえればと思っている。

60歳くらいの生徒さんは、いつも私に同じ話をする。

「女は仕事なんかしないで、子供産んで主婦やっていれば日本は平和なのよ」と。

彼女は、お子さんを3人立派に育て上げた女性だ。

今は、よほど男性の稼ぎがないと、専業主婦として子供を育てるのは難しいだろう。

しかし去年あたりから、「保守派」と呼ばれている20代の女性が増えていると聞いている。

とにかく彼女たちは、専業主婦になりたい願望が高いというのだ。

30代、40代の未婚のせこせこ仕事をし、自分探しを続け、それでも一向に幸せそうに見えないストレスフルな女性たちを見て、危機感を募らせたというのだ。

「仕事を持っている女性ってカッコいい!」という志向から一転、「生きるために働かなければならない。それも不安定な雇用状態の中で」という経済的な背景も影響している。

最近話題になった、「単身女性 3割強が貧困」「未婚の男性の6割が恋人がいない…」といったニュースも、保守派と呼ばれる若者たちの焦りに拍車をかけることになっているかもしれない。

こういった現象が少子化問題にブレーキをかけられるかもしれないという明るい側面もあるかもしれないが、日本社会に対する諦めや逃避としての代替案というようにも言われている。

やっぱりマスコミにも問題があるよね。

何か意図的に「右に倣え」の傾向を作り、それをわざわざ扇動しているような気もするけどね。

しかし、これが現実なのだ。

私たち占星術家も、そうのんきなアドバイスばかりもしていられない。

私もやはり、社会進出を果たす女性は、男性に比べて多くの苦しみを背負う覚悟が必要だと考える。

成功した女性にスポットをあてるマスコミも多いけれど、その一方で、多くの働く女性たちが慢性的なうつや不安感を抱いているのは明らかな事実だ。

境界性人格障害といった精神疾患も圧倒的に女性のほうが多いと言われているが、それはここ数十年の女性にかかわる社会的要因、とりわけ女性の役割の変遷がもたらした影響が原因になっているだろうとアメリカでも報告されている。

最近の女性は強くなったと言われるが、鑑定していればわかる。

強い女性なんて見たことはない。

みんな相も変わらず、女として生きる機会を待ち望んでいる。

これが女の性なのかもしれない。

精神分析家のオットー・ランクによれば、女性の神経症は、その中に女として生きることの葛藤を持つことから生まれるものが多いという。

この世は「男によって書かれた女の物語のなかで、男が女を自分の望むとおりに描くことを可能にした」わけで、「女性がいかに男性から手本を得て、男性が考案したものになろうと」すれば、それはアイデンティティを放棄しているのと同じことだからだ。

「男はいつだって自分の要求を満たしてくれる女を創造しようとするもので、それが女性をおのれに対して不誠実にさせる」のだと。

それにより、女性のアイデンティティは大きく揺れ、自己との葛藤を起こす。

女性らしさというものが社会的に作られた幻想にすぎないことを主張したボーヴォワールの言葉「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」がこれに対応している。

女は「女」という意識なくしては、女でいることが難しい。

アナイスの言う「過去の声なき女たち、言葉を持たない直感のうしろに避難した、物言わぬ女たち。他方、行動の塊で、男性の模倣である今日の女たち」という言葉は、いまだに女性の私たちの心を揺さぶるではないか?

さて、このような複雑化した時代の中で、占星術におけるジェンダーの問題をどう解釈していけばいいのだろう。

私は対人関係、仕事などを考える際、女性であることの難しさも踏まえて解釈するよう勧めている。

男性サインの多いチャート、太陽、火星、土星などの強調、ノエル・ティルは蠍座、射手座、山羊座の火星を持つ女性は、女性としては強すぎるエネルギーを持つと言っていたが、そういった細々した側面を考慮に入れながら、社会的構造や価値観だけではなく、個人の欲求や潜在的な意識も考慮に入れるよう話し合っていく。

そして、やはり私の経験上、どんなに強い女性でも年端には勝てないことも忠告する。

女性にとって最大の敵は、残念ながら年齢であることも多い。

これは、社会的価値観だけでなく、生理学上の問題として出産リミットなどが考えられる。

そういった様々な問題を抱え込み、女性はそれでもこの過酷な時代を生きなければならない。

本当は、ここからもっと掘り下げて書きたいんだけど、あまりに長くなりそうだから、ちょっと中途半端な終わりになっちゃったけど、また第2弾として書いていくことにする。

明日の講座の資料も作らないといけないしね。

次は、具体的な解決策まで考えてみたい。