今日はローマ時代の哲学者キケロの言葉から。
「他人の不運に心を痛めるものは、また他人の繁栄に心を痛めるものだ。われわれは憐みを持たずに親切であることはできないのか?」
古代人は、最も同情心に富む人を最も恐怖心の強い人と同様に、最良の人と呼ばれる資格を持たないと判断していた。
ストア派の哲学者たちは、共感と羨望を同種のものとみなした。
女性的と言われる感性の中には、他者の痛みに非常に敏感に反応する同情心というものが存在する。
悲しい物語を聞くと、「かわいそうに…」と自分のことのように心を痛める。
しかし、また同じように他者の幸福に対しても敏感でもある。
嫉妬心により、心が引き裂かれるような気持に駆られる。
同情心と恐怖心は同義語である。
徳のひとつと考えられる愛他主義、利他主義も働きによっては、心の防衛機構として考えられる。
これは自我の成長を恐れる潜在意識の働きと言えるだろう。
自我の欲求を抑え、全体への意識を高める。
アンナ・フロイトによれば、これは「愛他的譲渡」と呼ばれる。
投影の機構により、自分自身の嫉妬を他者に投影したり、自分の攻撃的行為を他者のせいにする自分の衝動興奮を他人に「愛他的に譲渡」する場合だ。
同一視とも言われる。
この感性は、蟹座など水エレメントの特徴とも考えられる。
「オールドミスの媒酌人」「賭博の見物人」という言葉があるが、自分の幸福に良心の呵責を感じていたり、また勝負に賭ける興奮に罪悪感を感じている場合、それで満足感を得ようとするということだ。
こういったことは、日常生活のあらゆるシーンで見受けられる。
ドラマやスポーツに夢中になるのもそうだろう。
人のためならクレームもつけられるのに、自分のこととなると尻込みしてしまうという傾向もそうだ。
自分はボロの服を着て、人のためにせっせっと贈り物をするというのもそう。
人にチャレンジを勧めるのに、自分のために行動することはない。
自分の願望を他人に譲り渡し、自分の願望を他人に満足させてもらおうとするのだ。
アンナ・フロイトは言う。
「この防衛過程は二つの目的に役立っている。第一に他人に対して寛大な態度をもつことができるようになり、超自我から禁止されている自分自身の衝動を間接的に満足させることができる。また同時に、人間に固有な願望をある程度まで満足させるのに役立つように、制止されている活動や攻撃をも解放する」
つまり、この特徴が顕著な人々は、他者の権利のために、すべてを捧げることができるということだ。
親たちが、自分たちの野心を果たすことができなかった時、子供たちに愛他的に、あるいは利己的にその計画を押しつけることはよくあること。
この業界にも、この特徴を持つ人が多いはずだ。
では、自分たちの欲望に対しては、どのくらい責任を持っているのだろうか。
「昇華」という形で解放することもできるかもしれない。
自分にコンプレックスを持つ成功したファッションデザイナーなどは、このいい例だろう。
つまり自分の潜在的な欲望に気付き、「成功」という形である程度、達成された場合による。
革命家や慈善家なども、この特徴を持つとアンナ・フロイトは言う。
それ以外は代替品だ。
水瓶座や魚座は、山羊座という土星的自己実現の次でしか健全には行われない。
そう簡単に自分の人生を手放すようには、システムはできていないはずなのだ。
天王星、海王星の配置が顕著な今こそ、自分の欲望のありかを少しでも認識しておきたい。
欲望にふたをしたままでは、すべての善なる行為は、自分を苦しめる原因になってしまうかもしれないからだ。