心理占星術と未完成な日々┃nicosmic life

自分自身が納得できる人生を歩むために、ホロスコープの構造を利用する

個人史としてのホロスコープ

「このホロスコープは生涯変わらないものなのですか?」と、よくクライアントに聞かれることが多い。

ホロスコープに描かれているのは、宿命的なのかということだ。

心理占星術では、ホロスコープを個人の見た印象が描かれていると考えることがある。

ユング研究所の所長を務めた分析家のジェームス・ヒルマンの言う「ケース・ヒストリー(想起される個人の生活史)はすべてフィクションである」ということ。

つまり、「人の人生そのものは、わたしたちがそれらをどんなふうにおぼえているか、どんなふうにそれらを内面化し、それらによってどんなふうに影響を与えられ、またそれらにどう対処できるかということに比べると、はるかに重要性に乏しい」ということだ。

ユング風にいえば、私たちはそれぞれの神話を生きているということになるだろう。

だから、ホロスコープに映し出された物語は、個々人の見る心象風景でもある。

個人は、6歳で体験した引っ越しという物語をどう受け止めたのか。

新たな冒険としてか、それとも絶望的な別れとしてか。

それがソーラーアーク天王星がピックアップされた最初の刺激だとしたら、個人はその後、天王星を似たような反応を示すことになるかもしれない。

ソーラーアーク冥王星がASCを通過するタイミングはどうだろう。

個人は、17歳に起きた変容という壮大なテーマの何を、どこを、どんなふうに覚えているだろうか。

恐れか?

怒りか?

それともパワーチャージか。

その時の印象が、ホロスコープ全体の総体の象徴を変えてしまうこともある。

同じ体験をしても、記憶するエピソードは人それぞれ違う。

私はよく、同じ家庭に育った兄弟姉妹のチャートを同時に分析することがある。

ひとつ屋根の下で育った彼らが、家庭のムードの何を物語として取り込んだか、その相違をしっかり見極めてほしいと考えているからだ。

大抵、母親に対する印象は大きく違う。

つまり、月の発達年齢域の時代の差異の特徴的なことといったら!

それが個々人の個性を作り上げていることがよくわかる。

その後、水星期、金星期と物語を進めていく。

個人がどのような印象を築き上げていくことになるか、じっくりと歴史をたどっていく。

ネイタルチャートを分析した後、ソーラーアークやトランジットを使って、過去の物語に遡ってみる。

そして時に、難しい体験の記憶を書き直すということもやってみる。

17歳で起きたSA冥王星のASC通過の恐れの記憶を、敗北ではなく、勝利に書きかえることができるかもしれない。

なぜなら、個人はこうして今でも生き、懸命に闘い、いまだ人生に問いを持ち続けているのだから。

いつも書いていることなのだが、天体のエネルギーは適正か、または過剰・不足かの状態である。

そのどちらを選択するかで、個人の人生の物語は大きく変わる。

土星を損失と見るのか、それとも適切な減少と見るのか、または嫌な上司からのできない注文と考えるのか、それとも社会に適するためのステップと考えるのかでは全く違う人生になる。

傍から見ると、個人の心の中にどのような動きが進んでいるのかはわからない。

すべて本人が感じることだ。

だからこそ、ホロスコープをポジティブに見るようにしてみてほしい。

スクエアはダイナミックな成長のチャンスと考えられるし、冥王星は力の源だとも考えられる。

そうすればホロスコープは、より発展的な物語を示してくれる。