今日、クライアントがカナダのトロントへと旅立った。
脳腫瘍の治療に専念するためだ。
彼女は、私が心理占星術で鑑定をやり始めた頃からの長い付き合いで、脳腫瘍の摘出手術を受け、顔の半分に麻痺が残っている状態でやって来たのが彼女との最初の出会いだった。
まだストローで水を飲むのもやっとだったが、彼女がそういった難しい運命のすべてを受け入れ、人生を前向きに捉えていることに驚き、半年に一度ほど会い、人生のスケジュールを立てるお手伝いをすることは、私の楽しみにすらなっていった。
非常に優秀な彼女は、その間にいくつもの難しい資格を取得し、人生を再スタートさせる準備を着々と重ねていた。
その矢先に、腫瘍が再発した。
次の手術はもう無理だろうと診断され、あとは自然のままに任せようということになった。
その時、何度もメールのやり取りをして、今後の人生を話し合ったりもしたが、その間にフランス人のボーイフレンドができ、彼女は劇的に回復していったようにも見えた。
それでも、腫瘍の恐怖は消えない。
12月の初めに彼女に会った時、久しぶりにじっくりとコンサルテーションを行った。
子供の頃の話、父親との関係の複雑さ、優秀な母親の存在、一人っ子の重圧等、何度も聞かせてもらった話をおさらいし、その上で今の彼女が人生をどう捉えているのかも聞かせてもらった。
彼女は言った。
「先生、是非私のチャートを研究材料にしてくださいね。"小文字のq"がこんなにたくさんあっても、それでも生きるために頑張っている私のことをみなさんに知ってもらいたいんです」
"小文字のq"とはクインデヂレのことで、彼女と私は、いつも笑いながらそう呼んでいる。
彼女はチャート上にクインデヂレを8つ持っているのだ。
クインデヂレとは165度のアスペクトのことで、ドイツの占星術師トーマス・リングの考案をノエル・ティルが1000件以上のデータを検証し、その有効性を理解したうえで復活させた。
昔ブログで説明したので、呼んでいない人はそちらを参考にしてね。
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クインデヂレは不思議なアスペクトだ。
逃げたくても逃げられない強い魅力がそこにはある。
本人にそれを使いこなす力さえあれば、間違いなく才能にもなり、パワーにもなる。
ピカソの太陽q海王星しかり、モーツアルトの火星q月もしかり。
モーツアルトの音楽が癒しの力を持っていると言われているのは有名だが、それは彼自身が「注意欠陥多動性障害(ADHD)」を患っており、ドーパミンが少ない病気であったので、それを補うために心地よい音楽を作曲し、脳内のドーパミンが増加するようにしたのではないかと推測されている。
まさに月と火星の強迫観念が生み出した才能である。
アドラーは、劣等コンプレックスを努力や方向転換によって克服しようとする心理機制を「補償」と名づけた。
補償とは、自分が劣等感や引け目、苦手意識を感じている事柄(弱点)を何らかの方法や代替行為で補おうとする心理機制(心理メカニズム)のこと。
喘息等、器官劣等性(疾患・病弱・奇形など客観的に判断できる身体的脆弱性のこと)を持つ子どもが、トレーニングを積み重ねて体力をつけて強靭な肉体を手に入れたり、身体的弱点を他を知性で圧倒したりすることを言う。
クインデヂレの克服もアドラーの言う「補償」と成り得るであろうと私は考える。
この記事には書いていないが、クインデヂレは病気とも深く関係するアスペクトとも考えられている。
彼女は子供のころから血液の病気を持っていたり、身体が大変弱かった。
けれど神様は、そんな彼女に未来予知の力(彼女の太陽星座は魚座)と受容力を与えた。
実は、彼女からもらったヒントはたくさんある。
2009年の動乱を彼女は早い段階で予測していたのだった。
しかし、きのうもらったメールには「もし次の人生があるとしたら、"小文字のq"のない人生を送ってみたい」と書いてあった。
神様は乗り越えられない試練は与えないと言うが、彼女を見ているといつもこの言葉を思い出す。
彼女にだから、この試練は与えられてしまったのだ。
そして私は、彼女の健やかな幸せを遠くから見守るしかできない。