先日のアネモネの会でのコーチングの基本的姿勢の中に、「自己管理」というのがあった。
自分の言葉の影響について、しっかり理解することが重要だということだが、これはセラピストとして非常に大切な姿勢であると思われる。
私は言葉を変えて、これを「役割意識」と呼ぶことにする。
どちらも、MC=土星的な要素と言えると思うが、「セラピストとして自分は今、何をすべきか」ということを明確に意識できるかどうかというのは、現場において何よりも大切な点でとなる。
この仕事を選ぶ人の多くは、「人の役に立ちたい」「人の世話をするのが好き」「困っている人を見ると放っておけない」という性質を持つ人が多い。
では、人に熱心に関わることで、相手の苦しみや悩みが軽減するかというと、そううまくいくわけではない。
セラピストとしての正しい姿勢と、どうにかしてあげたいという情熱は、等しく正比例するとは限らないのだ。
適切な態度、適切な方法を用い、プロフェッショナルな立場としてクライアントと接すること。
それを常に意識しつづけなければならないのだ。
相手のペースに飲み込まれ、30分の鑑定時間を1時間もオーバーしてしまった。
お金がないと言われ、適切な金額を受け取れなかった。
リピーターだからという理由で、融通を利かせてあげた。
同じ話の繰り返しにイライラした。
怒りをぶつけられて、鑑定が終わった後、嫌な客だと嫌悪感を抱いた。
今まで、現場に出ている人たちから、そのような声をたくさん聞かせてもらった。
このような態度は、すべて「役割意識」を忘れた結果である。
私も駆け出しの頃、役割意識を忘れて、相手のペースにハマったという失敗をたくさん経験した。
今でも、自分がプロフェッショナルであることをうっかり忘れそうになることもある。
リピーターがやって来て、「先生と話している時が一番落ち着く」と言われたとしても、安易に喜ぶことはできない。
それは、セラピスト本人に向けられた言葉ではなく、セラピストという職業的「役割」に向けられたものであると理解し、セラピストに向けられたクライアントの感情にフォーカスし、「どうしてこういう言葉が出るのか」「他に落ち着く場所を持っていないという訴えなのか」と考えていく。
逆にクライアントと波長が合わない場合も、「私の鑑定に問題があるのか」と不安になることなく、「どうしてわざわざ鑑定に来てまで不機嫌になるのだろうか」と、やはり相手の態度に冷静に向き合うことができる。
心理学的に言うところの、転移、逆転移ということになるのだろうけど、現場を体験していると、こういった、相手の感情に飲み込まれそうになる場面に出くわすことは多い。
良い鑑定、悪い鑑定というのはない。
それは、相手が判断することであって、こちらの判断で決めることはできない。
自分が「今日はうまくいった」と思っても、クライアントの現状にとってそうでないことも多い。
共鳴することももちろん重要ではあるが、プロフェッショナルとしての現実的な視点も忘れないようにしたい。
自分のペースを守り、与えられた時間の中でしっかりと役割を果たす。
それがプロフェッショナルということだろう。
現場では、誰もあなたをジャッジしない代わりに、誰もあなたを守ってもくれない。
自分の身を自分で守るためにも、心を鬼にして「役割」に徹する必要がある。
今度、この辺の話をアネモネの会で取り上げようと思っている。
私の失敗談を元に、どのように接すれば適切だったかを話し合いたい。
また、みなさんの失敗談も聞かせてほしい。
少し、転移、逆転移の話もしようと思う。