心理占星術と未完成な日々┃nicosmic life

自分自身が納得できる人生を歩むために、ホロスコープの構造を利用する

中年期を健やかに生きるために必要なこと

講座やブログを通して、繰り返し、中年の危機の話をしてきた理由は、心理占星術にとって、とりわけ重要なトランスサタニアン――他者を通して、自己を深く理解する試みが進む時期であるからだ。

とり巻く状況も、また体験のしかたも人それぞれだが、それでもある共通した心的働きを見ることができるだろう。

n冥王星・t冥王星は生き残りの力に関する心的葛藤の感覚を、n海王星・t海王星は現実と理想のギャップによるエゴの失望の感覚を、n天王星・t天王星は新たな自己像の選択の際の恐れの感覚をそれぞれに味わうことになる。

「もう若くない私」は、家族や社会の中で必死にもがき、未来に向けて、自分の落ち着くところを探す。

締めくくりは、n土星・t土星だが、そのタイミングで手持ちの資源を再評価し、現実的な自己像を再構築し、未来に向けて腹をくくることができるようになるのが理想だ。

それがうまくいかなければ、その後はいくつになっても社会や他者に脅かされ、惑わされ、無力感に打ちのめされることになるだろう。

ただし、中年の危機のリベンジはいつだってできる。

本人がその気になれば、いくつになっても自分と戦うことはできるのだ。

分厚い心理学の本の中にも、中年期の問題が詳しく記述されている。

少し長くなるが引用してみる。

中年期においては、どのような発達的な挑戦を求められているのだろう。子供時代や成人期、老年期とどこが異なるのだろうか。

獲得と喪失のバランスでいえば、獲得のほうが多い時期から喪失のほうが多い時期に移行する。

また、人生の有限性の認識に出会い、それが社会での生き方を変えていく。獲得、成長、加算、完成の時期と、衰退、制限、喪失の時期の間に中年期がある。

もう「突進する」時期ではない。といって意地だけに収まるときでもない。手持ちの資源を十分に考えて自己的成長を果たすべき領域とあるレベルの機能を維持するべき領域を選び、投入するのである。

中年期はまた、野心的目標を得るための発達的締切が迫りもする。今さら、今後の人生で野心が満たされると思う幻想に浸るにはもう若くはない。これまでの人生に後悔の念を持ち、残された人生の発達的な締切に対処していかなればならない。

中年期の負担はたしかに大きい。だがまた、中年期はその発達的欲求やストレスに対処する十分な資源をすでに獲得してもいる。中年期はまたその時期までに蓄積してきた成熟した人格によっても助けられる。たんに穏やかになるという以上に、さまざまな実際的な対応の仕方を学んでいる。自我弾力性とは、外的、あるいは内的なストレッサーに対して柔軟で臨機応変な対応ができることを指す。

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弾力性。

これぞ、中年期後半戦=木星期にふさわしい生き方だ。

そういったしなやかな自己を手に入れるためにも、中年期前半戦=火星期の「悪あがき」が重要になってくる。

泥臭くても、ダサくても、がむしゃらに生きてみるのもいいかもしれない。

自分の力を出し切るようなつもりで。

悩みのない人生などない。

だからこそ、悩みを取り除こうともがくのではなく、悩みや葛藤を引き受ける「こころの器」を大きくしていくことができれば、健やかで大らかな木星期を迎えることができるだろう。