医療占星術の参加者から同じような質問をもらった。
講義の中で「土星が弱い、月が弱いとありましたが、どういう状態を弱いというのでしょうか」というものだ。
ホロスコープの分析は、多くの考慮点、数々の例外に満ちている。
いくつかの例を出して、「これが土星の弱いチャートです」というのは難しい。
土星が弱いというのは土星が適切に働いていないということだが、それを理解するにはチャートから判断するのではなく、チャートから離れ、クライアントからの情報を通して探っていくことを私は勧めている。
そうでないと、ただの押し付けの鑑定しかできなくなるからだ。
基礎講座の中で、天体の象徴を学ぶ際、まず天体のバランス――過剰・適正・不足を考えていく。
天体は動きがあり、エネルギーを持っているため、常に適正に働いてくれるわけではない。
過剰な状態と不足な状態を行ったり来たりしながら、状況に合った使い方を学んでいく。
その調整を間違えると、対処方法としての防衛機構につながることもある。
土星の適正というのは、与えられた環境の中でしっかり役割、義務、責任を果たす力であり、自己の限界を超えることなく、恒常的に現実生活を維持することができる力である。
過剰に振れれば、自己の欲求や目的から離れ、環境の要求に従い過ぎてしまい、それにより多大な欲求不満やストレスを抱え、自他に厳しすぎる態度を取り、そしてやがて無気力、無責任といった不足の方向に傾いていくことになるだろう。
例えば、どんなに土星が難しく示されたチャート(ハードアスペクト満載のような)でも、土星的問題(義務や責任を果たせていない、物理的に現実生活を維持するのが困難になっている)が起こっていなかったら、「今は土星の問題はない」と判断するべきだし、どんなに土星が安定したチャート(ソフトアスペクトしかない)であっても、実生活で土星的問題が起こっているのなら、「今は土星が弱い」と読む。
このような状況は誰にでも起こりうる。
誰でも土星の過剰ー不足を繰り返しながら成長し、やがて自分の適正を見つけていく。
つまり、チャート上で土星がどのような状態にあっても、成長過程では誰でも土星の試練に挑んでは挫折する、といった力学を体験するのだ。
その力学は、チャート上に示されることはない。
人は日々、いろいろな自分を生きているのだ。
一生モノのネイタルチャートに個人の成長のプロセスを限定するなんて、あまりに強引すぎるということだ。
それはホロスコープが信頼できないからではなく、天体表現というのは、常に安定しているわけでないということなだけだ。
今日は金星問題で頭を悩ます日もあれば、火星問題で打ちのめされることもあり、明日になれば金星が満たされた状態になる日もあるし、火星が気持ちよく獲得欲求を達成させる日もある。
それがチャート上に示されようが、示されまいが、人の人生とはそういうものなのだ。
鑑定の現場ではチャート表示をうのみにせず、むしろホロスコープはわきに置き、クライアントとしっかり向き合うくらいがちょうどいい。
クライアントの話をしっかり聞き、どの天体がどう問題になっているのか、それをチャートから判断するのではなく、クライアントの話から判断する必要がある。
幸い、私たちはコンサルテーションチャートやホラリーといった、「今」を知るツールもあるわけなので、それを利用して、クライアントの「今」のテーマに寄り添うこともできる。
また、鑑定の最中、私は頭の中で10天体を個別のビーカーに入れ、クライアントの人生の物語から、それぞれの天体がどのくらい充足しているのかをイメージするというのをやっている。
「今日の話は、月の目盛りが足りないな」という感じに。
アスペクトなど、完全に無視して、クライアントの「今」から状態や問題を判断するのだ。
これも講座中に常に話しているが、アスペクトは過去の体験として読むだけで、クライアントの今を教えてくれるものでは決してないと思っている。
特に太陽期を過ぎたら、アスペクトを読むのはあまり意味がない。
どの天体表現が難しく働いているかは、環境や状況などにより常に変化するものだからだ。
なので、チャートを診断する際は、ホロスコープに示された情報を頼りにするのではなく、クライアントの現状を最優先に読むことを心がけてほしい。
そのほうが、ずっと現場では価値のあるコンサルテーションができるはずだ。