4連覇のニュースに朝からすっかり酔いしれた。
オリンピックの楽しみ方はいろいろあるけれど、私は何といっても試合に入る前の複雑な心境と戦う選手の表情を見るのが好きだ。
誇り高く会場の声援に応える姿、不安と戦いながら己に喝を入れる姿、集中を高め無になろうと努める姿…
勝負に挑む瞬間はとても崇高で気高い瞬間のひとつだが、自分自身のこころと戦うのはそう簡単ではない。
少しでも隙があれば、弱さはというものはいとも簡単に侵入してくる。
こころだけじゃない。
身体の状態をピークに合わせる工夫も必要だ。
フェルプスやボルトのように場を支配する力というのもある。
つまり、火・地・風・水を我がものにした者が勝負を勝ち取ることができるということだ。
満月。
そして天空上では、火星と土星、そしてアンタレスが再接近中だ。
この日に合わせて、火星・土星のトランジットの話をいろいろ勉強会でしているけれど、オリンピックを見ていると、なるほど、火星土星の楽しさがより深く理解できる。
火星土星の組み合わせは、どちらかと言えば、のびのびと動きたい火星に対し土星が抑制といったフラストレーションを与えるという印象で読まれることが多い。
「アクセルとブレーキを同時に踏む感じ」というのは松村先生の言葉だろうか、こちらも火星・土星のアスペクトの象徴として聞かれる言葉だ。
火星の公転周期は2年、土星がひとつのサインを運行するのに2年半。
つまり、火星・土星がひとつのサインを運行中にコンジャンクションになるのは、ワンチャンスしかないということになる。
たった一度の機会を”フラストレーション”という象徴で終わらせてしまうのはあまりにもったいない。
何かよい使い方はできないだろうか。
山羊座は土星がルーラー、そして火星がイグザルテーションのエッセンシャルディグニティを持つ。
山羊座が得意とすることといったらどのようなことだろうか。
効率がいい
合理的である
生産性が高い
管理能力
こんなような言葉が並ぶだろうか。
とにかく、無駄のない適切な力の使い方を学び、その中で確実な結果を出す、それが火星・土星の使い方のひとつになる。
4連覇を果たした伊調馨は、蠍座に火星と土星のコンジャンクションを持つ。
189連勝、13回の世界大会優勝、そしてオリンピック4連覇。
通常、女性アスリートは、20代後半を境に急激に体力が落ちると言われている。
ケガもある。
そして何より、結婚や出産といった人生の転機を前にモチベーションを持ち続けていくことが難しくなる。
というとは、つまり彼女の持つ火星・土星のコンジャンクションは、限りある才能、能力、体力を「勝ち続ける」ためのエネルギーとして集中させることができているということになる。
練習方法や生活の仕方から始まり、意識の高め方、試合の進め方まで、自分の能力を最大限に活用するシステムを作ることができているということなのだろう。
だから、私たちも火星・土星の会合に合わせ、病気、ケガ、モチベーションの低下、経済変動に強い、”よりよい続け方”について真面目に考えてもいいかもしれない。
またもうひとつ、火星土星には制限があることの面白さを考えることもできる。
例えばレスリングは、6分間という短い時間の中に命の輝きがある。
また、細かなルールの中に工夫や洗練がある。
体力の限界、重力の限界、物理的な抵抗や制限があるからこそ、その一瞬が永遠のように美しい。
病床六尺、これが我世界である。
しかもこの六尺の病床が余には広過ぎるのである。
寝たきりの自身の状態を「病牀六尺」と呼び、絶望に近い状態を徹底的に楽しんだ正岡子規も、オーブがあるが蠍座に火星・土星のコンジャンクションを持っている。
人生の素晴らしさは自由や解放だけに、またはサザエさんやサクラダファミリアの永遠性だけにあるわけではない。
思い通りにいかない人生の中に喜びを見いだせたものこそ、時間や肉体といった土星的力を味方につけられるのかもしれない。