この時期になると、来年の運勢の原稿依頼がある。
これは私にとって、とても有意義で重要な仕事だ。
たかが太陽12サイン占い(基本的に恋愛中心)なのだが、私にとっては真剣勝負。
どの時期を選択するか、天体の組み合わせをどう読むか、そこからどんな未来を描くか。
経過図を眺めているうちに、めくるめく象徴の世界に舞い込むこともある。
先日、ある広告代理店の人と打ち合わせをしていた時、「うちの社員の占い好きの子が、震災後はどの占い記事も漠然として抽象的なことしか書かなくなったって言ってましたよ」と言われた。
そうなのかもしれない。
宇宙は、突然あんなふうに人の命を奪ったり、不安に陥れたり、どうしようもなく無力に感じさせたりするものなのだ。
このような顛末を、一体誰が想像できただろう。
311後、この仕事をやっている多くの人が「占いって一体…」というある種の虚しさを感じたのではないだろうか。
私ももちろんそうだった。
それでも私たちは、占星術師という職業に自負心を持たなければならない。
勇気を出して、来年の運勢も予測しなければならないのだ。
漠然としたものではなく、ビジョンとして提示していかなければ。
そんなことを考えながら、年末から2012年にかけての経過図を見ていた時、ふと土星、海王星トラインのアスペクトに心を奪われていた。
ではトラインはどうだろう?
ネイタルチャートで考えたら、「夢や理想、ビジョンを現実化するためのたゆまぬ努力」となるかもしれない。
個人のトランジットとして考えたら、前にブログでも紹介した「理想主義の崩壊」という形で体験させられることが多い。
では社会的に見たらどうだろうか?
土星・海王星がタイトなトラインを組むのは2011年末、そして海王星が魚座入りし、土星が蠍座入りをする2012年10月。
このアスペクトをさかのぼって調べてみると、いろいろ意味深い結果が出ている。
1976年のトライン時、世界的な大規模汚職事件「ロッキード事件」が発覚した。
日本でも田中角栄逮捕に揺れた。
それだけではない。
この年、20万人以上の犠牲者を出した中国・唐山地震が起こった。
これは史上最大被害の大地震だ。
当時中国は、1000万人以上の犠牲者を出した文化大革命の真っ只中にあり、そしてこの年、革命を引き起こした中心人物、毛沢東が死去している。
1989年の土星・海王星コンジャンクション時は、それこそ激動だ。
日本では昭和天皇崩御により元号が平成に変わり、リクルート事件でリクルート創業者・江副浩正が逮捕された。
この年以降、日本のバブル経済は崩壊へ向かった。
北京では800人近い犠牲者を出した天安門事件が勃発し、そして覚えている人も多いだろう、世界の歴史を変えたベルリンの壁が崩壊、ルーマニアでもチャウシェスク政権が崩壊した。
次のトライン2001年は記憶に新しい、アメリカ同時多発テロ事件・911が発生した。
そして今年、世界各地で大規模な水害が発生し、アラブ諸国で反政府デモが勃発し、独裁政権が崩壊し、日本では震災と原発事故が起こった。
海王星の主要な象徴に「犠牲」というのがある。
それを現実化させるのが土星の力だ。
そして海王星には、同情心、感情移入という重要な働きがある。
海王星は他人が体験していることに深く同一化し、心を敏感にさせるのだ。
他人の状況を理解しようという努力が生まれるので、人との感情的なつながりが生まれやすい時期でもある。
慈悲の気持ちが生まれ、人にサポートの手を差し出したり、また人の助けを素直に享受する状況も生まれるだろう。
つまり、自分の弱さも他人の弱さも含めた人間をそのまま丸ごと受け入れる感受性を育てなければならない時期ということになる。
運命は無慈悲だ。
時に宇宙は、悲惨な体験を味わうことでしか他者への慈悲心を持つことができない人間に対し、このような形で厳しい試練を与えてくる。
そうだとしたら土星・海王星の組み合わせは、鎮魂の歌なのではないだろうか。
歴史のうねりの犠牲になった人々に祈りを捧げること。
現世主義、物質主義に溺れた人間に対し、祈りや宗教や内省の必要性を思い出させること。
悲しみや優しさが人々の心をつなぐということを理解すること。
もし今、孤独を感じている人がいるとしたら、それは間違いだ。
土星・海王星の時期にこそ、何か大きなものにつながることができる、一体になることができるかもしれない。
だから、決してひとりではない。
今こそ再び、犠牲になった人々に祈りを捧げたい。