心理占星術と未完成な日々┃nicosmic life

自分自身が納得できる人生を歩むために、ホロスコープの構造を利用する

ノエル・ティルの適職占星術の重要性

職業を考えるのは、そう単純ではない。

「私の適職は何ですか?」という問いに、どれだけ重要な意味が持たされているか。

そこには実際、クライアントのたましいの訴えのようなものがある。

「私は何者になれば救われるのか?」といった切なる欲求。

これは一生をかけて探していくテーマでもある。

 

おそらく、多くの占星術の教科書は、MCのサインから適職を考えることができると書いてあるにちがいない。

ある生徒さんは、水星のサインで職業を考えようと教わったと言っていた。

 

まさかね。

そんな単純にいくわけない。

 

ノエル・ティルの適職占星術は、欲求理論に基づき、個人の真の職業的方向性を探っていく。

その手順は、やや複雑だ。

MCのディスポジターを追いかける、MC関連のアスペクトを整理する、クインタイルなどのアスペクトのチェックする、APや太陽と月のミッドポイントを確認する等、多くの指標を必要とする。

その上で、管理、芸術など、5つの方向性に分類していく。

職業は限定しなくてもいい。

個人の欲求エネルギーが望む方向を示唆することが重要なのだ。

それにより、個人はホロスコープ全体を意識した人生を送ることができると考える。

それがティルの適職占星術だ。

 

しかし適職を探しだすだけでは、解決とはいえない。

個人は、ホロスコープが望んでいるように、つまり本人の欲求の通りに進むことができずに、こうして道に迷い続けているのだ。

だから、ネイタルチャートをしっかりと分析し、「なぜ、こうなってしまったのか」を確認する。

絡み合った糸をほぐすことができなければ、せっかくの可能性、真の欲求エネルギーの方向性に踏み出すことはできない。

 

職業を考える上で、もうひとつ重要なことがある。

それは、時代の変遷とともに変化する職業意識、時代が生みだす新しい職業感覚に占星術家が追いつき、象徴を当てはめ直していかなければならないということだ。

価値観は日々変わっている。

時代に合った仕事スタイルが生みだされ、きのう花形だった職業がすたれていくこともある。

その変化に天体やハウスの象徴を考え直すこと。

それも適職占星術には重要な作業になる。

 

また、こんな問題もある。

ジェイムス・ホリスは著書の中で、仕事と投影についてこう説明している。

 

「親、または親代わりの人、姿の見えない社会がそう望んでいるように思えたからという理由で、ビジネスを専攻したり、コンピュータープログラマーになったりした学生を、わたしは多すぎるほど知っている」

 

「仕事は次のものを投影するのに主要な媒介物となる。

アイデンティティ:専門技術を目に見えるかたちで習得することを通じて、人は承認が得られると考える 

②糧:人は生産的であることによって「社会」に食べさせてもらえると期待する 

③超越:次々と何かを達成することを通じて精神の卑小さを克服しようとする  

このような投影が崩壊し、自分の生のエネルギーの使い方についての満足感がもはや他のもので置き換えられなくなった時、人はミドル・パッセージにいるのである」

 

私はサインを先天的な資質、ハウスを後天的な環境からの資質と考えている。

そう考えるならば、MCは社会に見せるペルソナであるとも言える。

つまりMC的職業は、自分の欲求とは別のもの、ホリスの言う職業による投影、社会で生き残るためのペルソナなのだ。

だから、南半球の強調による防衛は、このMC的ペルソナにしがみつき、中年の危機で足元が崩れるような体験をすることもある。

 

「人は死ぬ運命にあり、時間は限られており、自分の人生に責任をもつことの重荷から誰もわたしたちを解放してくれないという事実は、もっと完全に自分自身になろうとすることへの強力な動機になるだろう」

 

見通しの立たない今こそ、私たちはもっと積極的に職業に対する考え方を見直してもよいのではないだろうか。

 

 

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