8/24(土)に開催する火星サイクルお互いを見守り隊・無料フリートーク会を前に、15年ぶりにカール・ロジャーズ『エンカウンターグループ』を手に取った。この間にグループワークやグループセラピー、ファシリテーションの構造やテクニックといった本は数多く出版されてきたけれど、やはり私のグループ活動の原点となっているこの本に戻って来てしまう。
目新しいことは何も書いていないし、仰々しい話や美談、感動秘話などもほとんど出てこない。ただ、グループ体験の豊かな価値について訥々と書かれているだけだ。
私の講座では、基本的にグループワークを取り入れている。ちょっとしたチャートリーディングもまずはみんなで話し合ってみる。ファシリテーターは順番でやってもらう。自分はどう考えたか。他の人はどう考えたか。なぜそう考えたか。なぜそう考えられなかったか。自分の考えを伝える練習にもなるし、相手の考えを聴く練習にもなる。それぞれの考え方の違いに対して、不安になったり勉強になったりする。何よりも、他者との間でお互いの考えを通わす練習というのは、自分を知るうえでとても大事だ。伝えられた体験、伝えられなかった体験は、自分の心にいつも戻ってくる。
ロジャーズは、エンカウンター・グループの必要性として、「親密で真実な関係性への飢餓」があるとしている。
先日、ポンピドゥーセンター主催の無料のアートイベントに誘われて行ってきたのだが、8割が外国人という環境が久しぶりだったというのもあり物珍しげに観察していて気がついたことがある。彼ら(恐らく多くはフランス人)には人を気遣う様子がほぼ見られないということだ。自分の話したいことを話し、したいことをして、気ままにその場を楽しんでいた。数少ない日本人は、常に周囲に気を配り、謝ったり、にっこりしたり、大きめの手荷物を持ちにくそうにしていた。
私たちは、一体いつ「親密で真実な関係性」を体験しているのだろう。
ロジャーズは言う。
それぞれの人間は、人生の初期に、自分の感情をありのままに表す行動よりも、シグニフィカント・アザーズから認められるような仕方で行動するほうが愛されるらしいことを学ぶ。そこで彼は、その見せかけの行動でもって外界と関係を保つようにな殻を身につけはじめる。この殻は比較的薄く、その人が意識的に演じている役割であって、その人は人間としてはこの役割からまったく異なっているということを少なくともかすかには感じている性質のものかもしれない。あるいは、それが厚い殻や装甲鋼板のようになっていて、彼はそれを自分と思い、内にある真の人間をまったく忘れ去ってしまっていることもある。
※シグニフィカント・アザーズ(重要な他者。その人の態度や人格の形成に重要な役割を果たす人々のこと。ふつう両親、兄弟、友人、先輩、上司、妻または夫など。ロジャーズは、幼児が発達する過程でシグニフィカント・アザーズに愛されようとしてその人の価値観を取り入れ、自分自身の経験にもとづく価値に気づかなくなってしまうところに後年の不適応=自己不一致の始まりがあるとしている)
ロジャーズの言葉は、火星サイクル手帳のP60、蟹座第1期のテキスト「波長合わせをやめ、まずは自分を大切に」と同じ話なのだけれど、これぞまさしく、ロジャーズの言う私が常に目指している「内的自己になる冒険」である。
武装を解いて、防衛せずに、ただの私として現れ出ることができる時に――つまり、自分が弱点や欠陥を多く持ち、過ちを繰り返し、当然知っているべきことに無知だったり、心を開くべき時に偏見に縛られていたり、状況に合わない感情にとらわれたりすることも多いという事実を受け入れることができる時に――私ははるかに真実であることができる。私が武装をしないで出て行くことができ、私のありのままと違った見せかけをしようとしない時、私ははるかに多くのことを学びとれる――皮肉や敵意からも。
まさに、今の時代に必要な言葉だ。多くの人たちは他者の言葉を求めすぎるか、恐れすぎるかしている。それは自分自身が内的自己になり得てないからなのだ。
火星は今、双子座の後半から、いよいよ蟹座へと向かう。蟹座ー獅子座の大冒険がはじまるのだ。その前に、このような機会を設けることができて本当にうれしい。
私もより率直に言葉を伝えていきたいと思う。猫が死んでから3か月、押しては返す感情の波に苦しんだこと、それでも自分の中に強さを感じることもできていること、そんなことを伝えてみたい。
それでは講座、勉強会、研究会、ワークショップ、そしてフリートーク会等でお会いしましょう。